お風呂場の床にちょっとの傾斜
2014年11月19日(水) 18:06
UXいろいろ, 日本発信四方山話, 栃木, 神奈川, モノ+コトの話SLIGHT SLOPE OF THE BATHROOM FLOOR: How nice to enjoy hot spring bathing, in an open-air bath in a cold season especially. It is one of the greatest Japanese cultures we are proud of. How cold, however, we always feel when we step out on the floor heading to the open-air bath. I happened to find a greatly designed floor which slight slope makes the water run off the edge run down to the drain automatically. The hot spring water keeps the floor warm, and even better it prevents the water used for washing from running down towards the bathtub. The drain for the cold-water bath (it is for those who enjoy taking a sauna bath) is surrounded with stones, which is to prevent the cold water from running down to the other drains and being mixed with hot water from the main bathtub. Such a thoughtful design shall seldom be noticed by guests, but such a transparently designed goodness is a real omotenashi, I believe.
露天風呂、最高ですよね。特に冬。顔はキリリと引き締まる寒さの中で首から下は温い。じわじわと身体の芯が温まるにつれて顔にも汗が浮かぶようになって、時おり半身浴をしてみたり。温泉旅館へ行って、露天風呂がなかったりするとガッカリを通り越して怒りすら覚えます(笑)。
そんな露天風呂大好き人間が温泉へ行くたびに「なんとかならないものか…」と首を捻ってきたのは、内湯から露天風呂へ向かうときの足元のひんやり感です。
奥日光で利用した森のホテルでは、露天風呂へと続く道の途中に排水溝を設け、湯船からあふれ出た温泉が必ずそこへ流れるようにしていました(写真[1])。そのおかげで、内湯から露天へ向かうときの足元がじんわりと温かい。実にありがたい設計です。ただし、排水溝付近に溜まる量が少し多すぎるせいか湯温がすぐに下がってしまうのは残念でした。露天から屋内へ戻ろうとするときに必ずこの溜まったぬるま湯の中を歩くことになるため、帰りは逆に少しひんやり感じてしまいます。
そして先日、お風呂場の床全体にほんの少し傾きを持たせることで、そんな足元ひんやり問題を解消することに成功している旅館に出会いました。奥湯河原 結唯です。湯船からあふれ出た湯は床面をジワリと流れて端にある排水溝へと流れていきます(写真[2]…写真では分かりにくいですが、椅子の向こう側へ向かって確かにあふれ出た湯が流れています)。ま、たいした距離じゃないんですけどね(笑)。
内湯の床も同様で、湯船からあふれ出たお湯は洗い場のほうへと必ず流れていくようになっていました。源泉かけ流しのお風呂なので、入浴している人がひとりもいなくても少しずつお湯があふれ、洗い場へと流れていきます。これによりお風呂場の床は常に保温されることとなって温かいし、加えて洗い場で使われたお湯(シャンプーや石鹸を含む)が湯船のほうに流れていくことも防げてしまうというまさに一石二鳥な設計でした。
サウナを楽しみたい人のために水風呂も用意されていましたが、そこからあふれ出た水は湯船のすぐ外に設けられた専用の排水溝へと直接流れ込むように作ってあります(写真[3])。おまけに囲いまでしてある。この囲いがないと、あふれ出た水が洗い場のほうにある排水溝へと流れてしまう可能性が上がります。そうすると、せっかくの床面保温効果が薄れてしまいますし、水風呂に興味も用事もない人の足元に水(や湯と混じったぬるま湯)が流れることにもなるでしょう。油断している人にとってのひんやり感といったら、軽く飛び上がるほどかもしれません。ちょっと囲うだけが、実に適切。こうした配慮に基づく設計になっていることに気づくお客さんは少ないかもしれませんが、気づかせないくらいに透明化する配慮こそが真のお・も・て・な・し!だと思うのでした。